
昔から日本の食文化に深く根ざしていて、誰からも好まれるウナギですが魚類であることはわかるのですが、特徴や生態はあまり知られていません、ウナギは、その神秘的な生態と独特なライフサイクルで知られる魚です。特にニホンウナギ(Anguilla japonica)はいまだ多くの謎を秘めています。以下にその主な特徴と生態をまとめてみました。
ウナギの 基本的な特徴

分類 ウナギ目ウナギ科ウナギ属
体型 細長く、ヘビのように体をくねらせて泳ぐ「蛇行型」の遊泳スタイル
皮膚 鱗はあるが皮膚の中に埋もれており、体表は粘液で覆われている
嗅覚 非常に鋭く、イヌに匹敵するとも言われる
ウナギの生態とライフサイクル
ウナギは「降河回遊魚」と呼ばれ、川で育ち、海で産卵するという珍しい生活史を持ちます。
産卵 ニホンウナギは、フィリピン東方の西マリアナ海嶺付近で産卵すると考えられています。
卵は約1.6mmで、数時間後にふ化します。幼生(レプトセファルス)柳の葉のような透明な形で、海流に乗って数千キロを移動。やがて「シラスウナギ」と呼ばれる稚魚に変態します。

シラスウナギ
川への遡上 満潮時の潮流を利用して川を遡上。体色が黒くなり「クロコ」と呼ばれる段階に。成長期(黄ウナギ)
数年間、川や湖で生活。雑食性で、エビ・カニ・昆虫・死肉などを食べる。
産卵期(銀ウナギ)成熟すると体が銀色に変化し、再び海へ。産卵後は一生を終えると考えられています。
分布と種類 世界には19種のウナギ属が確認されており、主に熱帯〜温帯の河川や湖に分布。
食用として流通している種 ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギなど限られた種。
日本人に愛されるウナギのエピソード6選
ウナギが日本人に愛される背景には、文化・歴史・味覚の三拍子がそろった、まさに“国民的魚”ならではのエピソードがたくさんあります。いくつか印象的なものをご紹介しますね。
①江戸時代のマーケティング伝説 平賀源内の仕掛け 夏場に売れ行きが悪かったウナギを救ったのが、蘭学者・平賀源内。ある鰻屋に「土用の丑の日にウナギを食べよう」というキャッチコピーを提案したところ、これが大ヒット。以後、夏の風物詩として定着しました。
土用の丑の日とは?土用とは?「土用」は季節の変わり目の約18日間を指します。春夏秋冬それぞれに土用があり、立春・立夏・立秋・立冬の直前にあたります。五行思想に基づき、季節の変わり目には「土」の気が強まるとされ、土を動かす(引っ越しや工事など)は避けるべきとされてきました。
丑の日とは?「丑」は十二支の一つで、日付にも使われます。12日ごとに「丑の日」が巡ってくるため、土用の期間中に訪れる丑の日が「土用の丑の日」となります。
なぜうなぎを食べるの? 発明家・平賀源内が「丑の日に“う”のつく食べ物を食べると夏バテしない」という風習を活かし、「本日、土用の丑の日」と張り紙を出すよう助言これが大ヒットし、うなぎ=土用の丑の日のイメージが定着したといわれています。
2025年の夏の土用の丑の日一の丑 7月19日(土)二の丑:7月31日(木)年によっては丑の日が2回あることもあり、その場合は「一の丑」「二の丑」と呼ばれます。ちなみに、うなぎ以外にも「う」のつく食べ物(うどん、梅干し、瓜など)を食べると良いとされているんですよ。今年はどっちの丑の日にうなぎを食べますか?それとも、両方?
②関西と関東のウナギの調理法の違い
関東と関西では、うなぎの調理法に驚くほどの違いがあります。それぞれの地域の歴史や文化が反映されていて、食べ比べるとその違いがよくわかりますよ。
捌き方の違い
地域 | 捌き方 | 理由 |
---|---|---|
関東 | 背開き | 武士文化の影響で「腹開き=切腹」を避けたため |
関西 | 腹開き | 商人文化で「腹を割って話す」ことを重視したため |
調理法の違い
地域 | 蒸し工程 | 焼き方 | 特徴 |
---|---|---|---|
関東 | あり | 蒸してからタレをつけて焼く(江戸焼き) | ふわっと柔らかく、上品な味わい |
関西 | なし | 直火でじっくり焼く(地焼き) | 皮はパリッと、香ばしくコクのある味 |
タレの違い
- 関東風 さらっとした甘辛ダレ。蒸したうなぎに絡みやすい。
- 関西風 濃厚でとろみのあるタレ。脂の乗ったうなぎに負けない力強さ。
盛り付けの違い

- 関東:ご飯の上にうなぎを乗せる「うな重」スタイル。

- 関西:ご飯の間にうなぎを挟む「まむし丼」スタイルも。
あなたは関西と関東どちら派ですか?ふわとろ派?それともパリふわ派?どちらも美味しいのですが、食べ比べてみるのも楽しいですね。
③中京圏のうな重でもなく、うな丼でもない食べ方のひつまぶしとは?

ひつまぶしは名古屋の食文化と職人の工夫が生んだ、ちょっとした“まかない飯”から始まったとされています
起源と由来 発祥地は愛知県名古屋市とされ、特に「あつた蓬莱軒」や「いば昇」といった老舗のウナギ屋がその発祥とされています。
名前の由来 「お櫃(ひつ)」に入ったご飯に、うなぎの蒲焼を「まぶす(混ぜる)」ことから「ひつまぶし」と呼ばれるようになったという説が有力です。元々は、形が崩れたり小さかったりして商品にならないうなぎを細かく刻み、まかない飯として提供したのが始まりとも言われています。
ひつまぶしの食べ方 ひつまぶしはその食べ方も独特です。1杯で3度の味の変化が楽しめるのが魅力です。
①まずはそのまま。
②次に薬味(ねぎ・わさび・のりなど)をのせて。
③最後に出汁やお茶をかけてお茶漬け風に。
④そして最後は、自分が一番気に入った食べ方で締めるのが“通”の楽しみ方です。
ちょっとした豆知識
「ひつまぶし」は1987年に「あつた蓬莱軒」によって商標登録されましたが、現在では一般的な料理名として広く使われています。名古屋めしの中でも、ひつまぶしは“粋”と“工夫”が詰まった逸品。今度食べるときは、そんな背景を思い出してみると、より味わい深くなるかもしれませんね。三重県津市にも似たようなまかない飯の文化があり、そちらをルーツとする説もあります。
名古屋めしの中でも、ひつまぶしは“粋”と“工夫”が詰まった逸品。今度食べるときは、そんな背景を思い出してみると、より味わい深くなるかもしれませんね。
④ウナギは海外の方にも人気のある日本食です イタリア人フードライターは、初めてウナギを見たとき「ヘビかと思った」と驚いたそうですが、食べてみるとそのふわふわの身と甘辛いタレに感動。「日本の夏の風物詩」として心に刻まれたそうです。今ではウナギは海外でも有名な日本食となっています。
⑤ウナギの人生はドラマチック
西マリアナ海嶺付近で生まれ、長い旅路を経て川にたどり着き、数年を過ごしたのち、再び海へ戻って命を終えるウナギの一生。そのドラマチックな生態も、日本人の心を打つ理由のひとつです。
こうしたエピソードを知ると、ただの「美味しい魚」ではなく、ウナギがいかに日本の文化と感情に根ざした存在かが見えてきますね。
⑥現代ウナギは減っているので保全活動が行われています。
日本人が愛してやまないウナギですが、特にニホンウナギ(Anguilla japonica)は、かつて日本各地の川や湖で当たり前のように見られた存在でしたが、現在は絶滅危惧種IB類(EN)に指定され、深刻な減少が続いています。その保全活動は多岐にわたり、科学・行政・市民が連携して取り組んでいます。美味しいウナギを私たちの時代に絶滅させることなく未来の子供達も食べれるようにしたいですね。