日本人の国民食でもあるカレーですが、元々は他国から入ってきて日本人の好みに合わせるために、長い研究の末、国民食になった料理だということはご存じだと思います。カレーライスの歴史は、異文化の交差点で生まれ、日本独自の進化を遂げたとても面白い物語です。以下にカレーの歴史と日本独自に進化したカレーを紹介します。

起源 インドからイギリスへ

インド料理
「カレー」という言葉は、南インドのタミル語「kari(汁)」に由来します。18世紀、イギリスがインドを植民地支配していた時代に、現地のスパイス料理がイギリスに伝わりました。イギリスでは、シチューのように小麦粉でとろみをつけた「カレー」が誕生し、米と一緒に食べる「カレーライス」の形が定着しました。
明治時代 日本への伝来
明治初期、文明開化の波とともにイギリス経由でカレーが日本に伝わりました。1872年(明治5年)には『西洋料理指南』という本にカレーのレシピが登場し、これが日本初の記録とされています。陸軍や海軍の軍用食としても採用され、栄養価が高く大量調理に適していたため、兵士たちを通じて家庭にも広まりました。
大衆化と家庭料理への進化
1905年、日本初の国産カレー粉「蜂カレー」が登場し、輸入品に比べて安価で手に入りやすくなりました。1926年にはハウス食品が「ホームカレー」を発売し、一般家庭でも簡単に作れるように。昭和30年代には固形ルウが登場し、カレーは「家庭の味」として定着していきます。
学校給食と国民食への道
1948年、戦後の学校給食にカレーライスが導入され、子どもたちの間で人気に。1982年には「カレーの日」(1月22日)が制定され、全国の小中学校で一斉にカレーが提供されました。こうしてカレーライスは、ラーメンと並ぶ「日本の国民食」としての地位を確立しました。
身近な家庭料理としてのバリエーションの広がり
1963年、ハウス食品が「バーモントカレー」(りんごとハチミツ入り)を発売し、子どもでも食べやすい甘口カレーが登場。
カレーうどん、カレーパン、レトルトカレーなど、さまざまな形に派生。
1978年には「カレーハウスCoCo壱番屋」が愛知県に1号店をオープンし、外食としても定番に。
日本人の創意工夫が光るカレーの世界は、実に多彩でユニークです。ここでは、日本で独自に発展・誕生した代表的なカレーの種類を詳しくご紹介します。
日本で独自に発展したカレーの種類
カツカレー

誕生:昭和初期、東京・銀座の洋食店「グリルスイス」で誕生したとされます。
特徴:とんかつ+カレーライスの組み合わせ。ボリューム満点で、今や定番メニュー。
背景:「勝つ(カツ)」にかけて、験担ぎとしても人気。
カレーうどん

発祥:明治末期〜大正時代、そば屋が洋食ブームに対応するために考案。
特徴:和風だしとカレーを融合。とろみのあるスープがうどんによく絡む。
バリエーション:牛肉入り、ネギたっぷり、辛口など多彩。
カレーパン

誕生:1927年、東京・森下の「名花堂(現カトレア)」が発案。
特徴:カレーをパン生地で包み、揚げた惣菜パン。外はサクサク、中はとろり。
進化形:焼きカレーパン、チーズ入り、スパイシー系など。
ドライカレー

日本式:炒めご飯タイプ(ピラフ風)と、そぼろ状の具をかけるタイプの2系統。
特徴:水分が少なく、弁当にも向いている。スパイス感が強め。
由来:インドの「キーマカレー」や欧風カレーの影響を受けて独自進化。
スープカレー(北海道)

発祥:1990年代、札幌の「マジックスパイス」などが火付け役。
特徴:さらさらのスープ状カレーに、大きめの野菜やチキンがゴロゴロ。
魅力:スパイスの香りと具材の旨みが際立つ。辛さやトッピングを選べる店も多い。
各地域のご当地カレー(地域発の創作系)
海軍カレー(横須賀)明治時代、日本海軍が栄養管理のために導入。小麦粉でとろみをつけた欧風カレー。曜日感覚を保つため金曜に提供。横須賀市では「よこすか海軍カレー」として観光資源に。
富良野オムカレー(北海道):オムライス+カレー+地元野菜。
黒部ダムカレー(長野・富山):ダムの形を模した盛り付けが特徴。
金沢カレー(石川):濃厚でドロッとしたルウ、キャベツ千切り、ステンレス皿が定番。
これらのカレーは、単なるアレンジにとどまらず、日本人の味覚や文化、生活スタイルに合わせて進化してきた「創造の結晶」です。カレーライスは、異国のスパイス料理が日本の食文化と融合し、独自の進化を遂げた象徴的な料理です。今度食べるときは、そんな歴史に思いを馳せてみるのも楽しいかもしれませんね。